KIMONOS - S/T


9.5/10点中

個人的にはこのアルバムは日本語ロックのある種の到達点に達した、
エポック・メイキングな作品だと考えている。

旧来、日本語ロックにはある種の諧謔精神があった。
それは、「欧米のものを再解釈するから」という建前があり、
そういった、ユーモアが日本独自の素晴らしいロックを生んできたのも事実だ。

しかし、その結果、日本のロックは海外のロックとは別物になりすぎてしまった。
それはもちろんマーケティングの問題や日本のインディー音楽の問題もあるわけだが、
しかしながら、もっとシンプルに欧米ライクな作品やバンドはもっと出てきていいと
私個人としては思うわけである。
もちろん、安易に迎合しろというわけではないが、
しかしながら、現状そういった日本らしさと欧米らしさを兼ね備えたバンドというのは少ない。

KIMONOSのこの作品はそういった問題にとても良い回答を示している。
英語と日本語が入り交ざる歌詞も
日本のロックの要素と欧米のロックの要素が折り重なっていく曲も
まったく違和感がなく、腑に落ちる。

また、旧来の日本ロックが持っていた、良い意味の諧謔精神も感じられるし、
欧米のロックの持つダイナミズムや実験精神もここには感じられる。
また、シンセサイザーの音一つにしても
プリンスやトーキング・ヘッズ、一時期のスティービー・ワンダーのような先人たちの影を
感じさせてくれるのは凄い。

日本の文化と欧米の文化が未分化の状態へと引き戻し、
そこから、日本のロックを見つめなおそうという再構築の姿勢は
今の日本ロックの課題に真摯に向き合い、闘っている。
文句なしに素晴らしい作品だ。