LCD Soundsystem - Sound Of Silver


9.5/10点中

同時多発テロ以降の音楽として、アメリカ人の傍らにそっと寄り添っていた、
LCDサウンドシステム。
そして、NYの実験精神、そして音楽自体の素晴らしさをなんとか未来をつなげようとした、
熱血漢、ジェイムズ・マーフィー。

彼の音楽は、彼のアイデアのみでは成り立っていない。
彼の音楽には、オマージュ、引用といった強烈な歴史性がある。
まるで、松尾芭蕉が東北の景色を日本の文学の歴史を紐解きながら描いたように、
彼以降の音楽を始めるには、一旦、歴史性に立ち戻る必要があったのだ。
それは、彼がエッジを失っていると自覚しているから。
故に、素晴らしい音楽の姿を未来に引き継いでいくと決意しているから。

「LCD Soundsystem」でスーサイドやギャング・オブ・フォーを引用して、
ロック・キッズたちを強烈になじったように、
「This Is Happening」で、トーキング・ヘッズやボウイ、クラウトロックへの愛を表明したように、
この「Sound Of Silver」でも
過去の素晴らしい音楽の姿を、音楽への尽きない愛情とともに描き出す。

このアルバムの「All My Friends」が
ルー・リードとジョン・ケイルのオマージュと気付いたのは、
つい、先日のことだった。