Internet Club - Dream 3D


9.7/10点中

http://ailanthusrecordings.bandcamp.com/album/dreams-3d
http://www.mediafire.com/?92fa17ql5jfk5zr
(ここから無料でダウンロードできます)

3次元で体感できる夢というのは誰しも憧憬をもちながらもそれは実現不可能なものだが、
この作品を聴いていると、それはもう実現しているのではないかと錯覚してしまう。

音圧を調整し、強いリバーブのかかった、「霧(FOG)」や「靄(MIST)」が覆う音像は、
聴き手に強烈な酩酊感と多幸感を与えるとともに、3次元の「夢」の世界への導入を容易にする。
「GLOBES」は序盤の多幸感を象徴する曲であり、
現実から夢へと移り変わる、微睡のあの心地の良さがよく表現された、
このアルバムのイントロダクションの素晴らしさを証明する一曲だろう。
ピアノの旋律が美しい「CYBER PARADISE」、
メロディの朧気な輪郭が印象的な「LOGON CAFE (WEB LOUNGE)」で
夢の深度は徐々に深くなっていき、聴き手は霧の中に溶け込んでゆく。

しかし、後半になるにつれ、徐々に霧は強くなり、
「DRIFT I」、「DRIFT II」でそれはピークを迎える。
自分を完全に見失うような霧の濃さは倦怠感、徒労感、窒息してしまうほどの切迫感を表出させ、
作品は一気に緊迫の度を増す。
しかし、それを「DREAMS 3D」のアウトロが見事に払拭するからこそ、
このアルバム体験はより魅力的に、より「現実感」のあるものになるのだ。

もはやインターネットカルチャーの枠を逸脱した作品であり、
人の本質に触れてしまった作品のように感じる。
ヴェイパーウェイヴの一つの到達点を示した傑作。