杉真理 - MADE IN HEAVEN


8.1/10点中

ナイアガラの流れから派生した、「クリーン」なアルバム。

「未来」というキーワードが曲名にもあるように、
サーフポップ、AORのような、所謂「ナイアガラ系」にシンセサイザー等を導入し、
80年代以降の作品に更新しようと試みた作品だと言える。

近未来を強く意識し、シンセサイザーを用いたクリーンなサウンドは発売から20年経った今聴くと、
ノスタルジックでありながら、未来の音楽を聴いているような、アンビバレントな感触がある。
ムーディーな電子音で幕を開ける「未来世紀の恋人へ」、
ナイアガラらしさを感じる「青い楽園」、テクノ版AORとも言うべき「Heaven In My Heart」は
怪しげな電子音と杉の明瞭なボーカルがよく調和し、
人肌の温かみがありながら都会的なフィーリングがある。

ヴェイパーウェイヴが現れた今、
三田格氏がマッドエッグのレビューで述べていたように、
このアルバムも「クリーンなサウンドであることを逆手に取った」アルバムに
転化してしまっているように感じる。
今作の「ブラックミュージック」を基盤に「都会的」で
「ノスタルジックでありながら未来を志向」する姿勢はまさに「ヴェイパーウェイヴ」的であり、
それはこのアルバムから得られる経験をより良いものにしていると私は思う。