Destroyer - Kaputt


9.5/10点中

2011年の作品だが、今また聴く価値はあると思う。

BBC、cookiescene、Pitchforkでも述べられているように、
ロキシー・ミュージックのアヴァロンを参照して作られたような、
スペーシーで情感溢れる一作だ。
しかし、この作品の最も素晴らしい点は単なる「引用」「参照」に留まることなく、
それをしっかり新しさに転化できているところだ。

OPNのダニエル・ロパーティンはかつてSF作家レイ・ブラッドベリを引き合いに出しながら、
『世界が終わった後の社会に取り残された人々が昔の素材を滅茶苦茶に組み合わせて、
それが正しいものであると勘違いしてしまう未来の世界を想像している』と語り、
「ウルトラ-ノスタルジック・ミュージック」と自身の作品を括られることについて、
『僕自身はノスタルジーを感じることはなく、
僕は人が感じる何かについて考えようとしているだけ』と答えていたが(*1)、
まさにこのデストロイヤーの作品も、
前述のロキシー・ミュージックや80年代の音楽をただ単に参照するだけではなく、
それを現代の音楽の要素を含めて無茶苦茶に組み合わせることで、
懐かしさはありながらも、決してそれがノスタルジーになることはない。
人が過去のものを見た時に感じる何かを穿っているのだ。

このOPNやデストロイヤーのノスタルジーについての思索は
今の音楽シーンに対しての提言のように感じるのは私だけだろうか。
そして、だからこそ、この作品は今聴く価値がある。

(*1) Pitchfork : Take Cover Oneohtrix Point Never: Replicaより