Lapalux - Nostalchic


8.4/10点中

ノスタルジーは儚く、美しい。しかし、ノスタルジー自体は完璧ではない。
ノスタルジー自体には人間的な匂いが消えているからだ。
ノスタルジーがより説得力を持つにはそこに人間的な所作が必要なのだ。

では、このLapaluxはどうなのか。
彼もまた、ポスト・インターネット世代の旗手と目され、注目されるアーティストであり、
このアルバムでフィーチャーされているようにカセットを愛する、ノスタルジーの持ち主だ。
しかし、彼はそのノスタルジーを自らの手で改変し、より適したものに変化させていく。

独特のビートと流転していくポップなメロディの波は
彼の属する、ブレインフィーダーやAphex TwinやSquarepusherが全盛だった、
あの時代のWarpを彷彿とさせるが、
落ち着き払ったメロディとアルバムの均整によりフォーカスが当てられている点が
彼らとの違いを明確にする。

そして、よりR&Bへその舵を振り切った点もまた彼らとは違う最大のポイントだ。
繊細な質感やビートの一音一音からもその音への強い執着が感じられるのとは裏腹に、
その軸があくまで歌にあり、それによってビート自体を生かすことにも成功していることは、
リスナーとして非常に好感の持てる点だ。

アルバムとしてやや落ち着きすぎた点が残念な点ではあったが、
Lapaluxは必ずや、これを超える音像を我々に披露してくれることだろう。
ノスタルジーを打破し、それを「Nostalchic」にアップデートした今作は
あくまで序章にしかすぎないのだ。