Oneohtrix Pont Never - R plus Seven




9.8/10点中

JUNO-60を全面に使用した、『Rifts』に収められた初期3作。
強烈なノイズで幕を開けた『Returnal』の衝撃。
Chuck Personやsunsetcorpの名の下における挑戦的な試作。
そして、コラージュワークを新たな次元へと高めた「Replica」。
それから早2年で、ダニエル・ロパーティンは再び新たな音楽を切り開こうとしている。

彼の音楽はノスタルジックでありながら、
その実、現実とは全く異なる世界を見せている。
多彩な楽器やテクスチャを用いた今作は
ノスタルジアや異国情緒を感じさせ、
それがある種の懐かしさと結びつきそうになる。
しかし、異常なまでにディストーションのかかったサウンドや
突然の変調、 カットアップ、コラージュがそれを踏みとどめ、
そして、聴き手をまだ誰も見たこともない地平へと誘引していく。

スティーブ・ライヒ、フィリップ・グラス、ブライアン・イーノ……、
クラシカルな方法に則って作られた彼の音楽を聴けばこのような名前も浮かんでくるはずだ。
しかし、『R plus Seven』はその単なる再現ではない。
更にこの作品は偉大なアーティストの作品を更新するような可能性に満ちている。
何故なら、この作品では時代性が完全に失効しているからだ。
この『R plus Seven』においてロパーティンが
これまで以上に様々な楽器を使用したのも『時代性の失効』を意図してのことだろう。

そして、その意図はアートワークの端々からも伝わってくる。
ロパーティンは全てを等価にし、配列を組み換え、そのパズルピースを無造作に当て嵌めていく……。
そして、その営みの中から新たなものを見出そうとしている。

ノスタルジア、ドローン、サンプリング……、
様々な模索の末にロパーティンは遂に時代から逸脱する作品を作り上げた。
このアルバムは空虚であり、鏡であり、異なる世界と我々を繋ぐハブである。
このアルバムを一度聴けば我々はもう、
R Plus Sevenなどという成り立つはずのない方程式の成り立つ世界へと
足を踏み入れてしまっているのだ。