Vanguard - Diver



8.3/10点中

わずか17分の「アルバム」である。

Vanguardとの最初の出会いは「Echohunter」が契機だった。
Tiananmen Square Danceのコンピレーション、
「VHS Wave Vol Four」での鮮烈な印象は記憶に新しい。
このVanguardの「Echohunter」は群雄割拠のコンピレーションの中でも一際輝いていた。
しかし、コンピレーションに参加する他のアーティストとは異なり、
Vanguardはこれまでまとまった作品を一つもリリースしていなかった。
故に、私の中で彼(彼女?)の動向は「Echohunter」で止まっていた。

そのVanguardがAMDISCSからアルバムを発表するという。
これは聴くしかあるまいということで聴いてみたわけだが、なるほどこれは良い。
Com TruiseやNeon Indian、Joel Ford界隈とは違う、
チルウェイヴやヴェイパーウェイヴ、フューチャービーツを通過した、
気だるく甘い音はAMDISCSからリリースされるのもうなずける出来だ。

#2「Undercaves」は一つのハイライトになるだろう。
#1「Diver」で聴き手が作品の懐に入り混めたと安心する否や、
強烈なフックを喰らわされたような、Vanguardらしいアッパーなトラックで好感が持てる。
Soundcloudで最も人気を集める、#3「Everytime」も爽やかな曲で良いが、
やはり、このアルバムの核は#5「Echohunter」。
冒頭の霞がかった音像が徐々にクリアになり、躍動感溢れるビートが跋扈する演出には
何十回と聴いた今でもハッとさせられる。

収録時間の短さが最も惜しむべき点になってしまうだろう。
これほど才能の片鱗を見せながら、
わずか17分にその才能を収めてしまうのはあまりに勿体ない。

ともかく、広大な海に飛び込み、
自身の存在を世に問うたこの処女作は非常にポジティヴな出来だ。
Vanguardがこの音の海の中へ更に潜り込み、
驚くべき深海の世界を我々に提示してくれることを私は期待している。