Various Artists - Play That Beat Mr. Raja, Vol. 1



8.3/10点中

ele-king誌上でレコメンドされていた作品を聴いてみた。

「スティーヴ・ヴァイの1stをプリンスにモディファイ」させたというのは言い得て妙で、
このアルバムにはそういったエキセントリックさしかないと言っても過言ではないだろう。
チープなシンセサイザー、異常なまでにエコーのかかるボーカル、
高音がやたらと耳につくコーラス、とドロドロとした音に作品が満ちており、
本人たちが意図しないサイケデリアが聴き手を第三世界の空気に包みこむ。
そこが聴き手にとって地獄か桃源郷かはさておいて……。

しかし、ニッチな音楽ではあるが楽曲のクオリティ自体は粗悪なものではなく、
#1「Vikram Vikram (feat. Kamal Hassan)」からなかなか良い。
欧米や日本のような国では生まれないようなシンセサイザーのアイデア、
インド土着のメロディが新鮮で心地よい。
#2「Cola Cola Coca Cola (feat. Vani Jairam)」もまた頭抜けた曲である。
こんな陽気かつ妖気にコカコーラを歌う曲を少なくとも僕は知らない。
アルバム全体としても40分足らずで、
何かをしながら聴いているとすっと過ぎてしまうような時間だが、
不思議とメロディは頭に残っている。
これが土着の音楽の強さなのだろうか。

ともかく、可能性と新鮮さに満ちた、スリリングなアルバムである。
但し、オリエンタリズムがこのアルバムをこのアルバムたらしめていることも事実で、
非常に危ういバランスの上で成り立つ作品であることもまた言及しなければいけない。
このアルバムに可能性を見出せるか、
それはこのアルバムを聴く、あなた方に委ねられている。