Death Grips - Money Store


9.5/10点中

これだけ野性味溢れるヒップホップは久々に聴いた気がする。

実際問題、ヒップホップというジャンルにおいては
単に前衛的なだけだと、
非英語話者としては少々辛い部分もあるわけだが、
このアルバムに関しては緩急の付け方が上手く、
トラックだけでも楽しむことが出来る。

冒頭の“The Fever”が前述の緩急をよく示した曲であると思う。
非常にエッジの効いたビートが全体を通奏低音として流れるわけだが、
サビは非常にメロウで聴きやすい。

これは狙っていないかもしれないが、
5曲目の“Hustle Bones”も
J.Dillaがサンプリングした10ccの“The Worst Band In The World”を
髣髴とさせるオープニングでDillaファンとしては嬉しい驚きであった。
狙ってやっていたとしたら、余計に好きになってしまうのだが。

ともかく、前衛的でありながら、寛容さを持ち合わせている
デス・グリップスのトラックはどれも秀逸であり、よく構成されている。
ただ、MCのステファン・バーネットの存在なしには
このアルバムは成立しえなかっただろう。
彼の強烈なパフォーマンスが、
混沌としたグルーヴ感をさらに昇華させている。

アルバムのジャケットも含め、強く感情を揺さぶられた作品であった。