Metronomy - The English Riviera


9.5/10点中

前作「Nights Out」で、所謂「踊れない」ダンス・ ミュージックを奏でることで、
当時全盛だったダンス・ロックの喧騒に背を向け、
その諧謔性がメディアから高く評価されたメトロノミーが次に作ったこの作品は
イギリスの片田舎、デヴォンから着想を得たとジョー・マウントが語るように、
自分たちのルーツに真摯に向き合った、スリリングな作品に仕上がった。

発売された2011年はイギリス音楽の衰えがより顕著になった年であった。
アニマル・コレクティヴの「Merriweather Post Pavillion」以降、
リスナーはヴァンパイア・ウィーケンドやザ・ドラムスなどを筆頭とした、
アメリカ音楽の開放的な実験性を好むようになっていき、
ジェイムズ・ブレイクがヒットした一方で、
他のイギリスのアーティストに関しては殆ど顧みられなかった。

その中で、メトロノミーは前作の路線を推し進め、
無国籍性を強調することも可能だったわけだが、
まるで当時のサーフ・ミュージック再評価の流れや
イギリス音楽の停滞ぶりをあざ笑うかのようなジャケットとタイトルで
彼、彼女らはこのアルバムを発表した。

AORや様々な音楽へのオマージュを散りばめながら、
それを自分たちで再解釈し、作品として提示することの出来ている
このアルバムの完成度は極めて高い。
「The Look」や「The Bay」のようにシングルカットされた曲はもちろんだが、
「Trouble」のような名曲もこのアルバムにおいては
まるで普通の曲のような体で収録されているから驚きである。

ステレオタイプなイギリス音楽らしくない作品ではあるかもしれないが、
それだけに逆に聴いて頂きたいアルバムである。
絶対に聴いて損はしない。