Hella - Tripper


9.2/10点中

稀代の名ドラマー、ザック・ヒルが参加するヘラの5作目。

デス・グリップスにおいても狂気じみた手数のドラムを叩いていたザック・ヒルだが、
このヘラでもそれは変わらず、恐ろしいほど手数の多いドラミングが披露されている。

だが、手数が多いながらもザック・ヒルのドラムは非常に知的だ。
(メロスピのドラムにも良さはあると前置きしておくが)
メロディックスピードメタルのドラマーのように始終叩き続けるだけではなく、
彼のドラムには用意された「抜け」がある。
「緊張と緩和」という理論があるが、
まさにそれと同じで、敢えて力を抜く場面があるが故にドラムが決して陳腐なものにならない。
そして、その「抜け」はギターのメロディを引き立て、作品をより引き締める。

また、アルバムの構成自体が素晴らしいことにも言及しなければならないだろう。
変拍子と轟音のギターで覆われた楽曲は一見、聴きづらいように思えるが、
作品の根幹にはきちんとしたポップさがあり、何度聴いても飽きることはない。
音の異世界へ日帰り旅行を楽しむにはうってつけのアルバムだろう。