Saint Papsi - Studio 54



9.5/10点中

「スタジオ54」という実在のディスコ・クラブの名が冠された新作は
再び、ヴェイパーウェイヴの領域を更新していくような、快作となった。

現代の「スタジオ54」を作り出そうとしているのではないのかというほど、
このアルバムには古さが無い。
ローファイな処理も現代的な手法で行われており、サンプリング元の古さを殊更強調しない。
ピッチの変更もサンプリング元の良さを引き立て、アルバム全体の空気感を整えている。

また、斉藤由貴の「砂の城」まで出してしまうような、このサンプリングの豊富さは
様々な文化を受け入れる器の大きさを手に入れたヴェイパーウェイヴが
次のフェイズに向かおうとする大きな可能性を感じる。

この「スタジオ54」の持つ意味は、パーティーの終わった喪失感などではなく、
むしろ、かつて様々なアーティストが混じり合い、
新たなアートの発信地になった「スタジオ54」の輝きを現代に取り戻すような、
場の創造を意味するものだ。
そして、過去のものを現代に蘇らせ、新たな価値を見出す態度は、
ヴェイパーウェイヴのあるべき姿であり、真に創造的な態度ではないだろうか。