テクノ歌謡とロベルト・カッチャパーリャ



最近、テクノ・ポップが個人的に面白い。
実は先日のオメガトライブもこの流れで聴いた作品である。

ただ、そのオメガトライブもかなり良かったのだが、
テクノ・ポップの持つバタ臭さを全開にしたジャンルは
おそらく、「テクノ歌謡」というジャンルなのではないか、という帰結に至った。

まず、この曲を聴いて頂きたい。

ひょうきんディレクターズ/ひょうきんパラダイス


正直、バタ臭い、というのは否めない。
ボーカルも「オレたちひょうきん族」のディレクターということもあり、かなりヘロヘロ。
メロディも王道の歌謡曲といったメロディで、
今から見ればダサく聴こえてもしょうがない曲なのだが、
しかし、歌謡曲をベースとすることで耳馴染みは良く、
音的にはかなりエッジが効いている。

まず、冒頭のパーカッション。そして、80年代特有のベースライン。
そして、そこからの電子音の雨あられ。
この、歌謡曲や生音のローファイな要素と
シンセのハイファイな要素が絶妙な位置で交わっているのがこの曲の良さであり、
テクノ歌謡の特徴である。

シブがき隊/スシ食いねェ!


この「スシ食いねェ!」にしても、特徴は同様である。
ローファイな要素とハイファイな要素がここでも上手く交わっている。


さらにこのテクノ歌謡に共通するのは、
電子音が最小のエフェクトを以て、使用されているということだ。
あくまで電子音は電子音らしく、機械っぽさを強調して用いられている。

ここで思い起こされるのはイタリアの現代音楽家、ロベルト・カッチャパーリャが
アン・スティールをプロデュースした、「The Ann Steel Album」である。

Ann Steel/Measurable Joys


これは1979年に発表されたアルバムだが、
既に80年代におけるテクノ歌謡、テクノ・ポップの形がここで出来上がっている。
この「The Ann Steel Album」は所謂、奇盤・珍盤の類に属することの多いアルバムではあるが、
アニマル・コレクティヴやLAMAの中村弘二がその名を挙げるなど、
現代の作曲家にも影響を与える強度の強さを持っている。
そして、その理由はまるでモジュラーシンセサイザーのような、鋭い電子音が
極めてポップに使用されているからではないのか。

そして、テクノ歌謡もまた、この「The Ann Steel Album」が持つような、
エッジの鋭い音と寛容なポップさを持ち合わせている。
このジャンルの曲がオムニバス・アルバムとして纏められるほど、作られていたのも
その証左だろう。

テクノ歌謡はバタ臭い。
しかし、テクノ歌謡の中には確かに前衛と呼べるような音楽の要素が含まれている。
更に言えば、このテクノ歌謡を都会的に作り直し、より洗練させたのがオメガトライブだとしたら、
現代においても、テクノ歌謡が生きるスペースはあるのではないだろうか、と僕は思うのである。