【ヴェイパーウェイヴ探究】Fuji Grid TVの起源を辿る

 
以前、ここでもレビューしたFuji Grid TVのPrism Genesis。
80年代付近の日本のCM曲をサンプリングし、 それをアルバムとして提示した
ヴェイパーウェイヴと呼ばれるジャンルの中では極めて異質な作品ですが、
それ故にヴェイパーウェイヴの持つ深い混沌を暴く手がかりとなるのではないか、と思います。
今回はおそらく殆どYouTubeでサンプリングしたであろう、
このアルバムのネタ元を代表曲に絞ってですが貼っていきたいと思います。


・panasonic / hearing aid


(26秒から)


(3分42秒から)

・ssun dreamss


・change yr mind


・toyota / waiting for you




・slime ritual


・cinemax / speak


・fujifilm / cougar




・walkmann / lil babies

(9分28秒から)

・new life / cd player




ラークのCMなど削除されてしまったものも多々ありますが(以前検索した際はありました)、
このようにその殆どがYouTubeからサンプリングされたものと考えられます。
そして、それは80年代日本のCMからの引用であり、
これは他のヴェイパーウェイバーが模倣する要素の一つでもあります。
Hi-Hi-Whoopeeさんにもこのようなインタビュー記事があります)

ヴェイパーウェイヴは何故日本に着目するのか、定かではないですが、
このムーヴメントに先鞭を付けたダニエル・ロパーティンが
ピッチフォークのインタビューにてブラッドベリを引き合いに出し、説明したように、
曖昧な記憶のパズルピースを無理矢理な解釈で当て嵌めていくというような、
現代に欠けた何かを生み出そうとする動き、
また自分の記憶の中でしかないものを具現化するという
ある種の異化作用の中から出たものには違いないでしょう。

模倣者が増え、日本の文化に着目するというスタイルはもはや形骸化した感もありますが、
にも関わらず、ヴェイパーウェイバーが模倣しつづける、この日本、80年代というタームには
何かその単語以上の意味があるように思えて仕方ないのです。
そして、Prism Genesisのような作品には「百見は一聞にしかず」と言いたくなるような、
ただ単にその単語を目にするより豊かな意味がこもっている、そのように感じるのです。

Hi-Hi-Woopeeさんの記事で興味深いものがありました。
Fortune 500
実はこうした、自然淘汰というのは欧米のネット文化によく見られる現象で、
どれだけそのコミュニティに貢献できているかというので階級が決まっていくというシステムは
海外の掲示板ではよく採用されているシステムです。

開放的だったヴェイパーウェイヴを敢えて閉鎖的にし、
選りすぐりのヴェイパーウェイバーのみでレーベルを立ち上げる。
当然、その「選りすぐり」に入りたいヴェイパーウェイバーが出てくる。
その中で、よく作曲できている人間のみ厳選され、淘汰されていく。
良くできたシステムだと思います。

これによってシーンが成熟するのもよし、
これに対抗し、何にも頼らずに曲を発表し続ける人間が現れても面白い。
こうした面白さもヴェイパーウェイヴの一つでしょう。
Vektroidが自らの会社を「倒産」させてから以後も、
なお混沌とし、自らを更新し続けるヴェイパーウェイヴの世界には
今後も注目する価値があるのではないでしょうか。